当院開院10周年を記念して9月に１週間休診にさせていただいた。当院に通院されている患者さんや健康増進のため当院のメディカルフィットネスへ通われている会員の皆さんには大変申し訳ないと思いつつ、職員と伴に香港へ行ってきた。今年１月に一人体制になってからの外来の混雑は尋常ではなく、手術件数も増加の傾向。仕事量は一気に昨年の倍以上になってしまった。体に鞭打って毎日をこなし、１週間の疲れをとるため、週末は泥のように寝ずにはいられないこともある。5月には疲れから目眩がひどくなり、半日休診にせざるを得ないこともあったが、その後は何とか閉めずに診療を続けている。それでもなるべく体を動かす事を心がけ気分を変えるようにしている。昨年までマラソンや自転車、登山など運動を積極的に行ってきた蓄積があったからこそ、やっとのこと今を維持できているのではないかと思っている。来年4月からは医師２人体制にはなるものの、この状況が落ち着くまではあと１年近くかかるのではと危惧している。ヘタバって倒れてしまわないために、また休みをとらせていただく事もあるかもしれず、お許しいただきたい。
　1997年香港が英国から中国に返還されるちょうどその時、いいタイミングで香港大学へ留学していた。その前年、学位論文の提出が年末にあったため、論文作成に明け暮れ家に帰るのも深夜になっていた。整形外科専門医試験が明けて1月にあり、3月には学位論文発表。4月から香港留学と眼の回る様な１年だった。あれから15年、街中にあった空港も郊外の島に移転し、新しい地下鉄が開通していた。九龍のごちゃごちゃした街路は整然として大きなビルが立ち並び、我々が宿泊したリッツカールトンホテルは何と118階建てだった。尖閣諸島問題で抗日運動真っ盛りの中国だったため、渡航取り止めもやむなしかと憂慮していたが、その心配も空振りに終わった。資源が無く貿易と観光で成り立っている国際都市香港は、中国本土とは本質的に異なっているようだった。デモ行進もなく、抗日のビラや広告も見かけなかった。どの店に入っても嫌な顔一つされず、夜間外出すら全く問題なかった。
　地元で人気の飲茶のお店を教わり早速お腹を満たした。さすがに日本では味わえない美味さがある。わざわざ高級店に入らなくとも庶民レベルのお店で十分だった。平日の夜だというのに30分待ちの混雑したトラムに乗り、ビクトリアピークへ向かった。新しい高層ビルも増え、以前観た夜景より鮮やかになっていた。日常診療の現実から非日常の世界に入り込んだことで気持ちが和らいだが、留学期間中の仕事をやり終えなければならないプレッシャーのかかる落ち着かない日々を思い出し、複雑な心境になった。翌日も観光や買い物、飲茶に歩き回る。せっかくなのでホテル最上階の118階にあるプールも利用してみた。利用者もほとんどなくリッチな気分になれた。眺めも勿論言う事なし。その後スターフェリー乗り場にある有名なエッグタルトも食べ、老舗のペニンシュラホテルでのアフタヌーンティーも経験し、とにかくガイドブックのお勧めはやり尽くした。オープントップバスで走る九龍のネオン街では、職員一同ディズニーランドでの興奮さながらのはしゃぎようだった。天気にも恵まれ、オフの時間を本当に楽しめたと思う。帰りは余裕で香港空港に着いたのに、飛行機に搭乗する時間に遅れそうになってとてつもなく長い構内を走らなければならないというオチがついた。さらに成田に着いて間もなく、テレビのインタビューを受けてしまい我々の隠密旅行(?)はバレバレになってしまった。