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憲法記念日2021.5.3 に考える『水は人権である』水道民営化は行ってはいけない

column 憲法記念日2021.5.3 に考える『水は人権である』水道民営化は行ってはいけない

2021.5.3河北新聞『持論時論』に掲載された私の投稿文です。

『水は人権でありコモンである』

 身体の60%は『水』からできており、『水』は人の健康や命に関わる生命の源である。従って人間の組織そのものである『水』は基本的人権そのものであり、決して利益追求の手段としてはならないのである。

 日本の水道事業は現在、①人口減少に伴う給水収益の減少、②40年経過した水道インフラの老朽化など、差し迫った課題に直面している。その解決策として、宮城県が選択したのは、水道事業の民間への売却である。『経営基盤の強化を図り、持続可能な水道経営を確立していくため、民間事業者の経営ノウハウや資金、技術革新を期待している』としているのだ。それをどの自治体よりも先駆けて村井知事体制の下で実行するということが、県民にとっていかほどのメリットがあるのか。

 宮城県が民間企業導入のモデルとしたのは、イギリスとフランスである。1979年サッチャー政権下で、全ての公共サービスを民営化することが義務付けられた。しかし、2018年1月英国会計検査院で、民営化事業は『40%も割高』との調査結果を報告し、公共サービスでの民営化事業が禁止されることになった。フランスでは、1985年シラクパリ市長(後の仏大統領)時代に水道事業全体を25年間のコンセッション契約で民営化した。水メジャーで世界進出している『ヴェオリア社』と『スエズ社』である。2009年までに265%水道料金が値上げされた。2010年の国連で『水は人権』が決議され、パリ市で水道事業が再公営化されることになった。コンセッション契約も厳しくなり、5年に限定された。このように日本がモデルとした国では10年前に民営化事業に失敗し、既に終わっているのである。さらに、再度公営化した事業が世界で235件にも達している。マニラでは水道料金が5倍になり、低所得者は水道の使用が禁止された。ボリビアでは水道料金が一気に2倍以上になり、大規模暴動が起きて200人近い死傷者を出している。ドイツでは水道料金の高騰や設備管理の低下を招き、2013年に株を買い戻すことになったが、13億ユーロもの資金が必要となり、経費は全て水道料金に上乗せされることになった。北九州では安全安心な水を民間に委ねることには、市民の理解を見極める必要があると強調し、命に直結する水の民営化への懸念から民営化を導入しないと決定している。

 民間企業の効率化の手法は、現場で働く労働者の賃金カット、雇用者数の削減、必要な設備投資の先送りである。民間である以上、利益追求が第ーであって、県民の安全安心は二の次である。その経営は、借金を膨らませて税金の支払いを最小限にする、株主への高額配当・経営陣への高額報酬の確保である。しかもその経営内容は、県民に公開されることはない

 そもそも何の為の民間への売却なのか。宮城県では県民の理解を見極める努力をしたことがあるのか。これまで3回事業説明会は行われたが、質問数や時間も限定され、県民が到底納得できるものではなかった。単に説明会を開催したという既成事実を残しただけだった。

 

 

 民主的に管理され共有される社会的な富は公共財『コモン』である。『水』こそ『コモン』である。そして国連が採択したように『水は人権』でもある。その『コモン』を企業に売却し、儲けの対象として許してしまうシステムそのものが問題なのだ。村井知事率いる宮城県は県民を蔑ろにして、『民間』という『利権企業』のためのシステム作りを行なっている。まさに世界の流れに逆行していると言える。世界では、この『コモン』であり『人権』でもある『水』を我々の手に取り戻し、誰でも自由に利用できるようにすることが求められているのだ。決して利益追求の手段としてはならないのである。

是非下記リンクから署名お願いいたします。

https://miyagi-suidou.hatenablog.com/entry/2021/04/01/181055

記事の投稿日:2021年05月03日


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