2008年新年に思う(2008.1.16)
column | 2008年新年に思う(2008.1.16) |
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開業以来6回目となったドント祭の裸参りも無事終了した。
例年にない冷え込みとなったが、無風状態だったためむしろ体感気温は暖かだった。
しかし今回がデビューとなった佐藤医師にとっては、手のかじかむ大変なものだったようだ。
◆ 薬害肝炎
今年になってやっとのこと薬害肝炎に対して国が責任を認めた。
アメリカでは、フィブリノゲンがB型肝炎ウイルスに汚染される可能性が高いことと効果が疑わしいことから1977年(昭和52年)12月に製造承認を取り消したのです。
旧ミドリ十字は、1978年1月にその事実を把握し社内で回覧していたにもかかわらずそのまま放置していたとしかいいようがない。
その10年後の1987年(昭和62年)でも何の対処もされず、止血剤の第1選択として全国の病院で安易に使用され、肝炎患者は増え続けたのです。しかも原料血液はアメリカで買い付けられたもので、刑務所内の売血、麻薬中毒者や売春婦・夫を対象とした極めてハイリスクなものであったのですから開いた口がふさがりません。これは国と発売もとの責任以外のなんでもないではありませんか。それなのに賠償は30億円が限度だとか、政府は官僚の言いなりになってわけのわからないことを言い続けていた。
国民の健康を守るはずの厚生労働省が、財源がないとか机上の数字だけで国民を切り捨てようとするのは言語道断だ。同じことは年金問題にもいえる。全く同じ構造である。こうした問題にわれわれ国民は常にチェックをいれて、間違いがあれば今回の薬害肝炎の患者さんたちのように立ち上がらなければならない。
◆ 医療費抑制の矛盾、医師数不足で医療崩壊してしまう日本 日本の官僚は、世界一の財政赤字700兆の元凶が医療費の高騰であるかのごとく世論を誘導し、医療費の抑制を正当化してきた。しかしこうした政策は、世界の動きに逆行しているのです。高齢化がすすめば、医療費のGDPに占める割合を上げていくのは常識です。先進国の中でも高齢者の比率が高い日本が、もっとも医療費が抑えられているのです(日本7.9%、スウェーデン9.2%、カナダ9.9%、フランス10.1%、アメリカ15%)。 しかも医療費抑制のため、医師数削減も断行されました。私が大学に入学したときには120人定員でしたが、現在は20人も少ない100人です。今ではその影響がかなり強くなり、皆さんもご存知のように各地で医師不足が騒がれています。医師数が少ないために医師一人にかかる負担が激増しているのです。OECD(経済協力開発機構)加盟国の10万人に対する医師数の平均は310人であるのに対して、日本は198人です(フランス337人、イタリア420人、ドイツ337人、スペイン330人、ロシア425人)。しかも各国との差は年々増加の一方です。東北大医学部は定員を5名増加するようですが、これだけでは焼け石に水でしかありません。現在の世界平均に追いつくには、定員を50%増やしても(100人→150人へ増員)、35年かかる計算になります。 以前もこのコラムで書かせていただきましたが、私が大学病院に在籍していたころ、1週間で100時間近く働いていたこともありました。しかも時間外手当もありませんし、当直翌日も通常の仕事があり、手術もこなしていました。患者さんの命を預かって、さらに労働基準法も無視された労働条件で働かされ、それなのに時間給でいったら700円ももらっていませんでした。 医は仁術といった精神論で頑張ってきましたが、今の日本の医療は限界に達しています。身を粉にして過酷な労働をこなした挙句、何か起きたとたんに逮捕され、有罪になってしまう理不尽な現状に疲れ果て、やる気を失った勤務医たちが、現場を立ち去ろうとしています。まさしく医療崩壊です。このままにしていていいのでしょうか。
◆ 税金の無駄使い 高速道路の緊急電話250万円?しかも1kmごとに設置?
現在国会では、対テロ特措法が通過し、今度はガソリン税の暫定税率でもめている。25円/リットル安くなるかどうかの瀬戸際だ。安くなると2兆6000億の収入がなくなり、道路財源が枯渇してしまうというのだ。しかしどうだろう。防衛省だけでも水増し請求で6000億/年の無駄が発覚したが、他にも埋もれた無駄はたくさんあるはずだ。全て税金です。
そうした無駄を洗いざらい吐き出した上で、財源が足りなければ仕方ないかもしれない。しかしこの原油高で国民は疲弊している。財源確保ではなく、むしろ予算を縮小すべきだろう。 この特別会計で、日本の公共事業がいかに優遇されているか、皆さんはご存知でしょうか。
日本の公共事業の年間予算は、G7の中で最大です。しかもその額は他の6ヶ国(カナダ、アメリカ、フランス、ドイツ、イタリア、イギリス)の総額を上回っているのです!桁違いなのです。
さらに驚愕的なのが、高速道路には両側に、1キロメートルごとに緊急電話が設置されています。
日本道路公団は1台に250万円もかけています。原価はなんと40万円です。
水増し請求で原価の6倍以上の税金が支払われているのです!全国の高速道路に設置された緊急電話の総額はいくらになるのでしょう。恐ろしい話ではないですか。
国のこんな税金の垂れ流しを許していていいのでしょうか。
こうした無駄や公共事業費を削減しないで、なぜ医療費削減なのでしょうか。皆さんこうした間違いに怒りを感じませんか。
◆ 医療費の安い日本、それなのに世界一高い自己負担の矛盾、公共事業が大切な日本
盲腸の入院の場合、イギリスでは5泊で114万円、香港では4泊で153万円、韓国では7泊で51万円、日本では1週間入院で35万円(患者さん負担はその3割)。
当院で行っている作業療法士の手のリハビリは、20分1000円(患者さんの負担はその3割)ですが、街でよくある足裏マッサージより安いのです。患者さんの負担が少なくていいのでしょうが、実は患者さんが窓口で支払う負担は、G7中最高額なのです!イギリス、カナダは全額給付で個人負担なし。イタリアは外来が全額給付で、入院検査の一部負担のみ。ヨーロッパでは、他の国々も国民負担は無料か、かなり低額に抑えられています。 そもそも医療費約31兆は高いのでしょうか。公共事業費85兆、携帯電話とパソコン売り上げ26兆、レジャー費70兆、パチンコ売り上げ31兆なのです。日本は社会保障より公共事業が大切なようです。 日本の官僚 日本の官僚は公衆に奉仕する人ではなく、国家の繁栄を第一に考えるお上でしかない。最優先課題は国家が豊かになることであり、国民が幸せに生きる上で不可欠な”医療”も、経済の足を引っ張るマイナス要因という意識しかないのです。
◆ 国民の生命を守る医療をせめて世界平均に
財政赤字が、医療費削減の理由にはならないのです。
財政赤字を立て直すために行うべきは、国会の審議を素通りして公共事業や特殊法人に流れている特別会計の260兆である。
日本の医療費水準はG7中最低レベルだが、自己負担額は世界一、しかも公共事業は85兆でG7の日本以外の国の総額より多いという不可思議。 都内の一等地に議員や高級官僚の格安マンションを作ったり、官僚が天下りして莫大な退職金を繰り返し得たり、高速道路の緊急電話1台に250万円(原価40万円)かけたりする余裕があったら、医療費に回すべきです。医療費レベルを上げて、国民の生命を守る医療を世界平均並みにすべきなのです。
(本田宏済生会栗橋病院副院長・”誰が日本の医療を殺すのか”参照)
記事の投稿日:2008年01月16日