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2010煌煌通信

column 2010煌煌通信

① 新年明けましておめでとうございます。(2010.1.12 )

 昨年は仕事に山に充実した1年でしたが、体質や体調の変化を自覚し、年齢というものを感じた年でもありました。これまで健康には理由もなく自信があったのですが、6月に憩室炎をおこしてしまいました。1週間近く絶食で、点滴をしながらの診察でした。同じ憩室炎で3ヶ月間仕事を休んだとか、手術に至ったとかのお話など伺うと、休まず診療できたのは奇跡的でしたし、診察治療してくださった内科の先生に感謝感謝です。秋には生まれて初めて大腸ファイバーなるものも経験し、健康で仕事ができることの幸せを実感しました。

 今年の目標は、地味ですが健康と体力の増進です。昨年11月から早朝ジョギングを開始しました。雪などで走れないときはエアロバイクを漕いでいます。そして自転車通勤です。ノースカロライナ大学公衆衛生学部Gordon-Larsen博士らは、徒歩、自転車で通勤すると心血管疾患リスクが低減し、健康増進が見込めると発表しています。

 この研究では、自宅以外で働く2,364例を対象に、通勤時間や距離、通勤手段などの聞き取り調査と、身長体重、血圧、トレッドミルで測定した健康レベルデータと、身体活動レベル測定も行いました。分析の結果、全体の16.7%が徒歩や自転車通勤を実施しており、男女双方の健康維持に関係していました。特に男性ではBMI、肥満、中性脂肪値、血圧、インスリン値と逆相関することがわかりました。つまり徒歩や自転車通勤が、心血管疾患を低減し健康増進に有益であるということを裏付けた訳です。

 この私も、自転車通勤を始めるまでは、動脈硬化計測検査で年齢より5歳年とっていました。現在週に4日は往復14kmの自転車通勤です。自宅が丘の上なので出勤のときは割りと楽ですが、帰宅時には坂を登る一方なので汗びっしょりです。その効果もあって最近やっと血管年齢が年相応になりました。また学生時代にボート部や山岳部に所属してかなり腰を酷使していたため、椎間板も変性しきって長年腰痛に悩まされてきました。しかし今では腰痛をほとんど自覚しなくなったのです。自転車の太ももをあげる運動で、インナーマッスルである腸腰筋が鍛えられ、その結果腰痛が緩和したと考えられます。

 最近エコということでハイブリッド車が売れているようですが、それは本当のエコとはいえません。この際車をやめて、健康にもよく本当のエコである徒歩か自転車で通勤しようではありませんか。今回のCOP15(国連気候変動第15会締約会議)の主催地コペンハーゲンのような自転車専用道と信号機の整備や、パリの自転車レンタルサービスVelib’ ヴェリブのようなシステムを仙台にも導入し、さらに市内での歩きタバコやゴミのポイ捨てには罰金を課す条例作成など日本の他の都市ではしていない政策を思い切って施行し、本当の健康都市作りをして欲しいものです。仙台市長さんお願いします。

 

② 高齢者の心血管疾患死亡リスクは、歩行が遅いと3倍に?(2010.3.2

パリ第6大学のAlexis Elbaz博士らは、高齢者の歩行速度と全死亡、および癌、心血管疾患(CVD)、感染症や呼吸不全などの主な死因との関係を調査しました。フランスの3都市(ボルドー、ディジョン、モンペリエ)の合同調査で、65〜85歳の男女3,208例を5年間追跡調査した結果、「歩行の遅い高齢者のCVDにより死亡するリスクは速い者の3倍にのぼる」と結論しました(2009)。
 Elbaz博士らは、調査開始時に人口統計学的情報と医学情報を入手した上で参加者に6km超の歩行テストを受けさせ、速度計測カメラを用いた歩行速度の自動計測を行いました。その後5年超の定期的追跡調査を行い、低速、中速、高速の3段階に分けて死亡リスクを算出しました。その結果調査開始時に低速歩行者では、高速歩行者に比べて死亡リスクが44%高いことが判明しました。
 同様に低速歩行者のCVDによる死亡リスクは、高速歩行者の3倍に上りました。このようなCVDによる死亡リスクの増加は男女共通してみられ、年齢による差はなく、あまり体を動かさない人と普通に動かしている人の間でもみられました。歩行速度と癌による死亡の間には関連性はみられませんでした。
 同博士は「今回の調査結果は、高齢者の運動能力が歩行速度など単純な尺度により評価可能で、高齢者の生命と身体機能を守る上で運動による健康維持が果たす役割が大きいことを示している」と述べています。
 私たち整形外科医の役割は、外傷や関節変形などによって障害を受けた患者さんを治療するだけではなく、高齢化が進むこれからの社会で皆さんの健康維持のために運動をいかにひろめていくかも大切なことと考えています。当院のメディカルフィットネス煌煌(fun fun)もその一環ですが、さらに運動を楽しく継続してくための検討を行っています。

 

③ 自転車レース期間中のエネルギーバランス維持が重要(2010.8.8)

過酷な自転車レースへの参加者に関して、ミズーリ大学栄養運動生理学科のHinton准教授らは、サイクリングの区間レース期間中の栄養摂取を適切に行う事により、骨代謝回転への有害な影響は回避できるとする研究結果を発表しました(2010)。 これまでの研究により、競技サイクリングの選手は他の耐久スポーツ選手と比べて骨密度が有意に低く、骨折のリスクが高い事が知られています。区間レースによる高いエネルギー消費のため、骨形成と骨吸収のバランスが崩れる事がその理由の一つとされています。 今回Hinton准教授らは、サウスランドツアー(6日間に及ぶ10区間の自転車レース)に参加した一流サイクリストの血中の骨形成マーカーと骨吸収マーカーを調べました。その結果、レース期間中のエネルギー摂取がエネルギー消費と見合う選手では、両マーカーがいずれも有意に上昇していることがわかりました。つまり競技に見合ったエネルギー摂取が十分である選手では、そのバランスは崩れてはいないということです。そしてエネルギー消費量に対するエネルギー摂取の相対的な不足によって骨代謝回転の乱れ(骨形成の低下と骨吸収の増加)が起きるだろうと推察されます。ただしそれはサイクリストにおける骨密度低下の原因の全てではなく原因の一つに過ぎないという事です。他の因子としては、低体重、発汗に伴うカルシウム喪失などが考えられています。今回の研究は短期間のみのもので、今後長期の影響を調べる必要があると思います。  私も自転車を始めたのでこの記事に興味をもったので皆様にもお知らせしました。今回の2010.8.1の矢島カップヒルクライムで後半失速した原因は、もちろん体力不足もありますが、エネルギー摂取と水分電解質摂取の不足も原因だったと考えられます。それが激しすぎると骨密度も低下してしまい、骨折しやすい体になってしまう危険性もあるということです。もちろん私たちの競技レベルではそこまで悪化することはないでしょうが、体を鍛えるつもりが逆の事をしてしまう可能性もあることを実感しました。当たり前の事ですが、運動に見合ったバランスのとれた食事摂取に徹するという事ですね。

 

④ 高脂肪食にはオレンジジュースを(2010,8.30)

ニューヨーク州立大学バッファロー校内分泌糖尿病代謝学Husman Ghanim助教授らは、健康な男女を対象とした研究を行い、『オレンジジュースに含まれるフラボノイドが、ファーストフード摂取による酸化ストレスを抑制する』と発表しました。  今回の研究には、標準体重の健康な男女(20~40歳)10例ずつのグループが参加し、一晩絶食後にエッグマフィンサンドイッチ、ソーセージマフィンサンドイッチ、ハッシュドポテトなどの高脂肪/高炭水化物食総エネルギーkcal)を朝食として摂取しました。この食事には炭水化物81g、脂肪51g、蛋白質32gが含まれていました。  被験者は、朝食とともに300kcalの濃縮還元でないオレンジジュース300kcalのグルコース飲料水、を摂取する群に割り付けられ、全例とも15分かけて飲食しました。食後の血液検査で、オレンジジュース群では他の2群よりも活性酸素が少ないという結果でした。活性酸素は血管内皮の炎症を誘発し、心筋梗塞や脳卒中リスクの一因となることが知られています。また炎症、アテローム動脈硬化、肥満、インスリン抵抗性、および血栓の再開通後に起こりうる心臓細胞の損傷に重要な役割を果たしているToll様受容体の増加も抑制されます。  フラボノイド含有食品(今回の研究ではオレンジジュース)を高脂肪/高炭水化物のファーストフードとともに摂取することで、不健康な食品によって発生する酸化ストレスや炎症ストレスが抑制され、血管損傷の防止に役立つことが明らかになったわけです。

 

⑤ アミノ酸食が脳損傷を改善(2010.9.1)

米ペンシルベニア州フィラデルフィア小児病院のAkiva S.Cohen博士らは、脳に損傷を与えたマウスに3種の分岐アミノ酸(BCAA)からなるアミノ酸カクテルを摂取させると認知能力が回復するとの結果を発表しました(2010)。  現在の治療では外傷性脳損傷(TBI)後に生じる危険な脳の腫脹を緩和することは可能ですが、根底にある脳損傷に対する治療はまだ存在しません。今回の研究では、ロイシン、イソロイシン、バリンという3種類のBCAAから成るアミノ酸カクテルを飲料水に混ぜてマウスに与えました。  BCAAは、脳活動の適切なバランスを維持する神経伝達物質であるグルタミン酸塩とγアミノ酪酸(GABA)の重要な前駆物質です。TBIでは、脳の深部に存在し高次の記憶と学習に関与している海馬が損傷されやすく、最近の研究から海馬の損傷によってBCAAの濃度が低下する事が明らかになっています。BCAAの低下によって海馬での神経伝達物質がアンバランスとなって脳の興奮と抑制が制御できない状態に陥ってしまうのです。  今回の実験で、食事介入によって摂取されたBCAAが脳損傷部位で神経化学物質が適切なバランスに回復したことを証明しました。  BCAAは現在肝硬変などの治療にも用いられており、また運動の際に生じる筋損傷の回復や栄養にもなっています。私は登山や自転車などの運動時には必ずこのBCAAを摂取していますが、年とともに衰える脳にもいい刺激になるのではと期待しています。

 

⑥ 地中海料理風の食事で心機能が向上?(2010.9.14)

インディアナ大学プルーミントン校栄養免疫学のJun Dai助教授らは、双生児を対象とした研究を行い、『心疾患リスクを高める高い遺伝子変異を有していても、地中海料理風の食事によって心機能が向上する』と発表しました(2010.3)。 地中海料理の特徴は、飽和脂肪酸が少なく、魚、果実、野菜、豆類、堅果類、オリーブ油、穀類などに富み、適度な飲酒も含まれます。心疾患リスクの低減効果が知られているが、その機序はまだ解明されていません。 対象はヒスパニック系の白人男性の一卵性と二卵性の双生児として生まれた中年男性276人で、被験者の食事データと心疾患データを分析しました。栄養摂取の内容を地中海料理との類似性でスコア化し、心拍変動(HRV)測定は携帯式ホルター心電計によって継続的に記録しました。 同助教授らは『今回の研究では、双生児を対象とすることで、遺伝的要因やその他の家族性の影響を調整しつつ、HRVにおける食事の影響を評価することが可能となった』と述べています。 今回の研究で得られた知見は、①地中海料理との類似性スコアが高いほど、HRVが大きい事が示され、心臓関連死が9~14%低減される事がわかった。②遺伝によるHRVへの影響は、20~95%の範囲でした。 同助教授らは結果について、『地中海料理風の食事を摂る男性では、西洋料理を摂る男性よりも、HRVが大きくなる事を確認した。HRVは日常生活における心拍の変動状態を指し、HRVが小さい事は、冠動脈疾患や突然死の危険因子とされている』と説明。さらに『この事は、地中海料理に近い食事を摂る人の方が、心拍を制御する自律神経系がよく機能することを意味している』と結論しています。 この結果は女性や他の民族の男性には当てはめられないものですが、飽和脂肪酸が少なく、果実やオリーブオイルなどの地中海料理風の食事の摂取は、心疾患リスクを低減すると期待されます。私も油はオリーブオイルにしちゃいます。

記事の投稿日:2010年01月12日


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