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谷川/西ゼン(2011.10.23)

column 谷川/西ゼン(2011.10.23)

 越後湯沢駅前ホテルに泊まった我々は深夜2時起床した。天気予報では朝から60%以上の降雨確率で、入渓すらも無理かと考えていた。しかし窓の外は生暖かく、路面も濡れていない。星空かどうかまでは分からなかったが、雨雲はないようだった。昨日新幹線大宮駅構内で購入した駅弁を腹にかき込み、沢登りのためのウェアを着込んで腰にはハーネスを装着した。前回同様ヒルの多い場所だけに、防ヒルスプレーを施したスネ当ても巻いた。まだ暗く人影もない外へ出て車に乗り込んだ。今回は総勢5名。新人女性T隊員1名もいるが、頼りになる仲間がフォローしてくれるだろう。
 林道の車止めゲートからはヘッドランプを使って歩き始めた。こんな深夜に山に入る物好きは我々くらいだろう。群馬大ヒュッテがあるところで本来なら徒渉となるが、舗装された立派な橋がかかっている。何のための橋なのだろう。また税金の無駄遣いかと嘆きながら山道へ入った。小1時間で仙倉沢に入渓した。少し明るくなってきた。上空高くうっすらとした雲の流れが早い。これから天候が崩れるのか。沢の水流は透明で、岩の濡れ加減から水量はピークからかなり減っているようだった。前方の稜線にも雲はかかっていない。ひょっとするとこのまま雨にも遭わずに行けるかもしれない。
 西ゼンは沢の8割がスラブで、昔買った沢の本の背表紙にもなっていた。紅葉の西ゼンの写真は圧倒的で、いつかは行きたいと思っていた。最初の25mのナメ滝もスラブ状で滑り台のようだった。乾いたところを四つん這いになり、両手と靴底のフリクションを効かせながら登るしかない。しかし前日までの雨の影響か、沢全体がヌメっていて登れない。草付きの側壁にとりつき、ザイルを出して登った。時折稜線にガスがかったが、視界の妨げになるほど広がりはしなかった。滝をいくつか超え、嫌らしい草付きのトラバースも何とかこなした。第2スラブの中央に来たとき、ルートの選択を誤って難しいところへ出てしまった。すぐ後ろをついてきたT隊員は緊張のあまり動けなくなってしまった。このままでは危険なので、スラブに斜めに入ったバンドのリスにハーケンを打って10mだけ下降しようとした。そのとき少し上に登っていたS隊員が買ったばかりのロープを出してくれた。『さすがザイル仲間』と感心したのもつかの間、そのロープの断端を固定もせずにそのまま投げ落としてしまったのだ。『何やってんの』こんなときにそんなミスをしちゃいかんのだよ。絶対はないかもしれないけど、こんな時絶対確実に確保しなければ、いつか自分も事故を起こしてしまうよ。確保の状態を十分確認しないまま滑落してしまった事故は過去にいくらでもある。仕事でもそうだけど確認は大切だ。でももう1本ロープを予備に持っていたらしく、この場は難なく回避できた。ほっと一安心。今回の自分のルートミスはとにかく反省。皆を危険な状況に引っ張り込まないよう自制しなくては(沢自体すでに危険なのだけれど)。
 緊張のスラブも終了したが、この先にクマザサの薮こぎが待っていた。なんと1時間の濃密な薮こぎ。今までは、薮こぎの少ない沢をわざわざ選んでいたので皆楽をしすぎたかな。今回は山の会始まって以来のものだった。これには皆閉口した。やがて傾斜も緩くなり、クマザサの丈から顔が出るようになると、池塘がやっと現れた。これで遡行終了だ。記念撮影して早々に下山にかかった。下山道もくせ者で長く傾斜も急。さらに紅葉の落ち葉で滑りやすい。疲れのあまり紅葉を愛でる余裕はなくなっていた。周囲は徐々にガスが濃くなり、車止めゲートに着く頃になって雨が降り出した。天気予報はいったいどうなっているんだ?越後湯沢でへぎそばを堪能し、前回も利用した駅前の共同温泉浴場で汗を流した。家に着いたのは21時半をまわっていた。

記事の投稿日:2011年10月26日


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