イタリア自転車旅行(4)
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町を出ると道の両側は見渡す限り農地として耕されている。延々と続く道を進むと丘の上には集落も見える。そこにもやはり教会があった。いくつかの町を通過し、ほぼ平坦だった道は徐々に上り坂になっていった。イタリアの脊梁になっている山を超える道のようだ。橋を渡ると川が深くなってきた。山へ道が続いているがどこまで続くのか。最初のうちは前の二人に追従できたが、徐々に離されていく。この1年の運動不足による体力減が如実に現れた。丘の上に道があって見晴らしがよい。その上り坂は延々とどこまでも続いている。対岸の丘まで牧草地が広がっていてさわやかな風が吹き上げる。雲が湧いては消え流れていく。蔵王や鳥海山ヒルクライムであれば1時間半程度の上りで済むが、もう何時間上っているだろう。体力は落ちていたが、不思議なことに限界は感じなかった。仕事のことも忘れ頭は空っぽ。ただひたすら漕ぐ。イタリアまで来て何でこんなことしてるのだろう。イタリアの大地に抱かれ、ちっぽけな一人の人間があがいている。諦めたりいじけたりせず、ただ生きている今の時間を精一杯生きる。今、自分にできることをやり尽くす。それに尽きる。人生も自転車も一緒だな。
丘の上の緩やかな上り道の風景は徐々に峠へと向かっていた。二つの稜線が合わさる鞍部へ道が導かれ、やっと上りが終わる。これで上りも終わりだ。峠には100台くらいの大型バイクや車が停車していた。皮ジャンを着たライダー達がカフェの前の白い椅子で思い思いに休憩していた。自転車で来ているのは我々だけだった。ライダー達の聖地?なのだろうか。ここで初めて自動販売機を見つけた。干え上がった体に水分を十分浸透させた。休息をとって体力回復を待った。
さてここからは下り!バルベリーノの湖を目指す。バイク100台が連ねていたのに、道路を走る車は少ない。日本だったらこのような観光地はもう渋滞だろう。今までの上りの景色とはまた違う風景が眼下に広がった。尾根の裾野が続き、所々耕された農地も見える。道幅は狭いが路肩には石垣が続く。ゴミ一つ落ちていない。いくつかある小さなロッジの前には数台のカラフルな車が停まっている。道路ぎりぎりに建つ建物の間を縫うように爽快に自転車で下っていく。前方に大きな牧草地が現れ、視野が突然開けた。遠方に連なる山々が広がり、その手前には目指す湖が見えた。やっと今日のゴールだ。何とも言いようのない開放感があった。
ホテルに着くと、車で伴走してくれたEくんとお別れになる。今日中に300km離れたローマまで行かなくてはならない。明日の飛行機で日本へ帰国するのだ。彼がいなければこの初めての地イタリアでの自転車走行はかなわなかっただろう。本当に感謝感謝だ。心残りだが、無事の帰国を祈る。
記事の投稿日:2015年03月23日